プロジェクト最前線

建物が資源に!?国内初、リユースで新築に挑む

⼤林組技術研究所 OL3新築計画

2026. 02. 25

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1965年に開設した大林組技術研究所。赤色の枠で囲った建物が解体した電磁環境実験棟。ここにOL3を建設する

大林組は、東京・清瀬市にある大林組技術研究所の一画で、古くなった建物を取り壊し、使用されていた鉄骨やコンクリート製の構造部材を、新築建物にリユースする国内初の取り組みに挑んでいる。リユースとは、一度使われた物を、廃棄せずにそのままの形、または手直しをして再び使うことだ。

今回新たに建設するのは、実験棟オープンラボ3(OL3)。工事は2期に分かれており、構造部材をリユースした第1期工事は完了し、続く第2期工事では、最先端の環境配慮技術を採用するとともにサーキュラーコンストラクション®(Circular Construction)の一環で大阪・関西万博で使用されていた資機材をリユースする。

サーキュラーコンストラクションとは、大林組が掲げる建設業界における廃棄物の削減と資源の有効活用を目指す循環型の建設システムのことだ。

建物をばらばらにして組み直す

CO2排出量は従来比49%減

温室効果ガスの排出量を削減し、気温上昇の限度などを定めた2015年のパリ協定採択から早10年。その間、日本を含む多くの国が2050年カーボンニュートラルを宣言するなど、持続可能な社会を希求する全世界からの要請は日に日に高まっている。そんな社会を実現する上で、サプライチェーン全体のCO2排出量が多いとされる建設業に課せられた責務は大きい。

大林組では、2019年に地球・社会・人と大林グループのサステナビリティを同時に追求する「Obayashi Sustainability Vision2050」を打ち出し、持続可能な社会に向けた取り組みに注力してきた。OL3の建て替えに取り組む今回のリユースプロジェクトもその一環だ。とりわけ、大林組独自のサーキュラーコンストラクションを推進する上で、非常に重要な検証材料になるとして、社内外からの注目度は高い。

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大林組技術研究所OL3工事事務所所長 永谷元明

大林組技術研究所OL3工事事務所の所長 永谷はプロジェクトの全体像を、「築約30年の実験棟を建て替えるに当たり、解体する既存建物の柱・梁・ブレースといった鉄骨部材と、基礎や基礎梁、床などに使用されていたコンクリート部材を一度撤去し、強度や長さなどが足りないものは補強・調整を加えてから新築建物にリユースするものです」と説明する。

木造建築を解体して部材をリユースする、既存の地下躯体をそのまま再利用するといったケースはあったが、躯体部分まで一度ばらばらにした上で組み直すというケースは国内では初めて。世界的に見てもまれな工事だ。新たに全ての資材を調達した場合と比べ、CO2排出量は49%削減される。

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第1期工事では電磁環境実験棟の構造部材をリユース(赤:リユース材、黄色:新材)
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解体建物から取り出した鉄骨とコンクリート基礎部を、新築建物の躯体に利用する
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解体建物から鉄骨梁、コンクリート床を取り出す

第1期工事は2025年夏に完了し、鉄骨の57%、コンクリートの33%でリユース材を活用した。現在は、研究エリアと研究支援エリアで構成される新築部分の第2期工事が進んでいる。

「第2期工事では、製造時のCO2を100%削減した鉄筋を採用し、大林組の環境配慮技術も多く盛り込むとともに、大阪・関西万博で使用された資機材をリユースします」と永谷。大阪からの資機材の運搬には、鉄道を利用した低炭素輸送手法を実施。従来のトラック輸送よりもCO2排出量は約75%削減と、脱炭素への取り組みに抜かりはない。

後から加わったリユースの視点

新しい部材を取り出すように解体

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大林組設計本部建築設計部主任 辻 知也
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OL3の建物構成(水色:研究エリア、オレンジ色:研究支援エリア、黄色:設備エリア)

2026年秋の全体工事完了に向けて順調に進捗する本プロジェクトだが、今日までの道のりは決して平坦ではなかった。もともとは、古くなった実験棟を、大林組の最先端テクノロジーを結集した実験棟へと建て替えることが目的でスタートした。最大のポイントである構造部材のリユースが加わったのは、プロジェクトが動き出した後のことだ。

本プロジェクトで意匠設計を担当する大林組設計本部建築設計部の主任 辻は、「既存建物の構造部材をリユースすることは、計画を社内に報告するタイミングで出たアイデアです。技術研究所はもちろん、特にオープンラボシリーズ(技術を見える化したオープンな実験空間)には、技術開発だけでなく、大林組の技術を社内外に発信するショールームとしての役割もあります。今の社会的ニーズを鑑みれば、構造部材のリユースにも挑戦し、持続可能な社会の実現に貢献する会社としての姿勢を示すことに大きな意義があると考えました」と転換点について話す。

「一般的な新築工事では、品質や工程を管理するための方法や手順がありますが、今回はどのような基準で管理するのが適正かが分からない。まずは、その基準を探るところからスタートしました。着工後の解体工事も、解体というより次の製品を作るイメージに近く、取り組む意識が大きく変わります。社内の関連部門はもちろん、通常は新築を担当するPCa(プレキャスト)専門の協力会社などにも解体前に何度も現場を見てもらいながら、慎重に進めていきました」と所長の永谷。

既存建物から新築建物に使う部材を取り出すフェーズも非常に重要だったため、設計段階で既存建物のどこをどう切断するかを細かく書き起こした解体図面を作製した。さらに、各工事特有の条件などをまとめる特記仕様書には"解体編"という新章を設計部門で追加した。

手探りだったのは社内に限った話ではない。「中でも品質や性能を評価する外部機関の方々には、この建物をどう評価するかという点で、大変ご協力をいただきました」と辻。建築確認審査では、リユース部材が現行の法規に適合していることが重要だ。解体した建物が建設当時の法基準を満たしていたという事実は、リユースする構造部材の品質や性能を裏付けるエビデンスとなった。また、リユース部材を新築に活用するに当たり、構造計算へどのように反映させるかについても、一つひとつ確認しながら慎重に検討を進めた。

大林組技術研究所オープンラボ3 構造躯体のリユース(動画再生時間:5分4秒)

万博パビリオンの設備機器や建材を180点リユース

最先端の環境配慮技術も多数採用

進むたびに浮かび上がる課題の一つひとつをクリアしながら、プロジェクトの計画は着実に進行し、全体の設計も完了した。第1期工事の着工がいよいよ2カ月後に迫るタイミングで、今度は大阪・関西万博で使用した資機材をリユースするという案が浮上した。主導しているのは大林組環境経営統括室の部長 中込だ。

「環境経営統括室は、社内の脱炭素と資源循環、自然共生を進める部署です。2024年4月に立ち上げたワーキンググループでサーキュラーコンストラクションについて意見を交わす中で、万博リユースのアイデアが生まれました」と中込は説明する。

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大林組環境経営統括室企画部部長 中込昭彦

大阪・関西万博で大林組が手掛けた建物のうち、リユースを検討した建物は4つ。本プロジェクトで使用予定の資材と適合性が高いパナソニックグループパビリオン「ノモの国」を選定すると、すぐにパナソニック ホールディングスに接触した。

「すると、パナソニック ホールディングスでも、ノモの国で使用した建築部材を99%以上リユース、リサイクルするという目標を掲げていたことが分かりました。大林組からの提案は、両者にとってメリットがあり、非常にスムーズに話が進みました」と中込。また、この取り組みは2025年日本国際博覧会協会が掲げた「サステナブルな万博運営」とも親和性が高いものだった。

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第2期工事ではパビリオン「ノモの国」で使用された①インターロッキングブロックや②ウッドデッキ、照明器具など、約30品目180点の設備機器や建材をリユース。最先端の仕上げ材が多く使用され、視覚的に持続可能な技術が体感できる空間は、ショールームの役割も担う
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    ①インターロッキングブロック

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    ②ウッドデッキ

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    照明器具

このほか第2期工事では、CO2削減鉄筋の採用に加え、大林組や大林グループが開発した最先端の環境配慮技術が数多く使われている点も特徴だ。たとえば、炭素を固定化する「クリーンクリートN®」や「リグニンクリート®」、海洋副産物を活用したシーリング材「スキャロップシール®」、自然由来の材料を用いた土系舗装技術「オーククレーR®」なども使用している。また外壁、開口部などの外皮の高断熱化と省エネ設備の高効率化などにより、1次エネルギーの使用量を再生可能エネルギーの創エネで差し引きゼロにするZEBを達成する見込みだ。

第2期工事の施工が進む今も、毎週のように技術研究所をはじめとした社内の技術開発部門から新しい提案が寄せられている。その多くがまだ現場で使われたことのない最先端のものだ。

【第2期工事に採用した主な環境配慮技術】

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    クリーンクリートN
    低炭素型コンクリートのクリーンクリート®にCO2を吸収・固定した粉体を添加。CO2排出量を大幅に削減

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    スキャロップシール
    海洋副産物(貝殻)をシーリング材に活用し、CO2排出量を削減

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    リグニンクリート
    パルプの製造工程で排出されるリグニンをコンクリートに添加

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    アルファティンバー
    木材をシート加工で不燃材料とした内装用建材

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    オーククレーR
    自然の土を開発樹脂で固めた土系舗装技術を内装床として適用(共同開発:大林道路)

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    オークウッド
    建設現場の伐採材をチップ化し、再利用した木質系舗装(開発:大林道路)

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    緑化技術
    屋内外壁面および床面を緑化

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    CO2削減鉄筋
    CO2削減量をオフセット分として割り当て、CO2排出量を100%削減した鉄筋(製造:東京鉄鋼)

永谷は「採用予定のなかった新しい技術を、既に動いている工事に途中から組み入れていくのは簡単ではありません。ですが、中には自社事業のプロジェクトだからこそ扱えるものもあります。社会的価値の大きさやリーディングカンパニーとして大林組があるべき姿などに鑑み、アイデアはできる限り採用したい。そんなスタンスで、日々、技術開発部門に説明を聞きにいくのも、今回ならではですね」と思いを語る。

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第2期工事の基礎・地中梁主筋部にはCO2削減鉄筋を国内で初めて建物に採用

未来の建築のスタンダードへ

道なき道を切り拓いてきた担当者たちには今、どんな未来が見えているのだろうか。構造部材のリユースには、脱炭素面での効果が見えた一方で、コストやスケジュールなどに課題がある。資機材のリユースに関しては、今後、保証関係や保管場所、輸送手段などの詳細を詰めていく必要がある。辻は「見えてきた課題を一つひとつ検証した上で、次のプロジェクトにつなげていきたいです」と課題の所在が明らかになったことこそが今回のチャレンジの最大の価値だと説明する。

「現段階ではまだまだ商業ベースに乗せるのは難しいですが、仮に類似ケースの相談を受けた場合、どこにどんな課題があるのか、その課題の大小を含めて説明できると思います。現在、大林組が行う他の解体工事現場で発生したスクラップからアルミ材を選別し、アルミサッシに再生してOL3に利用する取り組みも進めています。私の立場としては、こうした知見やノウハウを社内で共有する仕組みづくりも考えていくつもりです」と中込も語る。

困難に挑戦しない限り、新しい景色が見えることはない。最後に永谷にプロジェクトの展望を聞いた。「入社以来現場一筋でやってきた私にとって、これから現場のスタンダードになるかもしれない未知の技術に先んじて触れられるこの現場はとても刺激的です。大林組の環境配慮技術の最先端を詰め込んだOL3から、今後は時代に必要とされる技術が次々と生み出されていく。業界をリードしていく大林組の一員としてそんな未来を想像しながら、最後まで全力で取り組みます」と力強く語った。

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(取材2025年11月)

工事概要

名称 ⼤林組技術研究所 OL3新築計画
場所 東京都清瀬市
発注 大林組
設計 建築:大林組
構造:大林組
概要 S造、3F
工期 2024年4月1日~2026年9月15日
施工 大林組

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