2025年度土木学会賞を受賞しました

サステナビリティ

土木学会では、土木工学の進歩や土木技術者の資質向上を図り、社会の発展に寄与するためにさまざまな活動を行っており、国内外の優れた土木事業や新技術、さらには土木工学、土木事業に多大な貢献があったプロジェクトや個人などを表彰しています。

2025(令和7)年度の土木学会賞では19部門122件の受賞が決まり、大林組は技術賞をはじめ複数の分野で選ばれました。

【2025年度土木学会賞 受賞概要】

技術賞

■熱水変質を帯びた低強度地山を円形二重支保工にて克服(北海道縦貫自動車道七飯町大沼トンネル避難坑西大沼工区)

北海道縦貫自動車道の延長約7kmに及ぶ大沼トンネルの避難抗(本線と並行して設ける避難用トンネル)を建設しました。トンネル本線に先駆けて施工することで、事前に地山の状況や施工リスクを把握し、現在施工中の本線工事の安全性向上に寄与しています。

今回の工事は、熱水変質(※1)により地山の強度が低下しているうえ、土被りも大きいことから、掘削時に支保工にかかる土圧による変形や崩壊が懸念されました。そこで、国内でも実績の少ないトンネル内を二重で補強する円形二重支保工を採用するとともに、三次元FEM解析(※2)により地山や支保構造の変化を予測しました。

掘削面が崩れやすい地山に対して、円形二重支保工を採用し、土圧を分散することでトンネル断面を保持

また、レール方式を採用した小断面NATM(※3)による工事では国内初となるTWS(トンネルワークステーション)工法の導入により、支保の早期構築を可能とし、変位抑制と安定掘削を実現しました。

今回の受賞は、特殊な条件下において円形二重支保工の採用により完成させた貴重な事例であり、今後の類似工事への適用も期待される点が評価されました。

  • ※1 熱水変質
    地下を循環する高温の熱水やガスが岩石を構成する鉱物と反応し、粘土鉱物などに変えてしまう現象
  • ※2 FEM解析
    有限要素法(Finite Element Method)による構造解析のこと。複雑な形状の部材や構造物を単純な形状の要素の集合体としてモデル化し、地震、温度などによる力に対して、各要素の応力や変形などを求めたり、これにより構造物全体の変形などを求めたりする高度な解析方法
  • ※3 NATM(New Austrian Tunneling Method)
    掘削箇所の表面にコンクリートを吹き付け、ロックボルトで地山を補強することで、地山が本来持つ耐荷能力を生かして安定させる仕組み

■川上ダム建設事業におけるDXの導入(CIMの設計・施工・維持管理への一貫利用)

三重県伊賀市に2023年に完成した川上ダムは、治水、水道用水の供給、川の流れを保つ(河川環境の維持)などを目的に建設された重力式コンクリートダムです。

建設業界では熟練技術者の減少や働き方改革による労働時間規制への対応が課題となる中、川上ダムでは、品質と安全を確保しながら効率的な施工の実現が求められていました。また、完成後の維持管理に建設段階の情報を生かすことも重要な課題でした。

デジタルツインにより建設工事の工程・安全・品質を統合管理

川上ダムでは、設計・施工・維持管理の各段階で、3次元モデルにさまざまな属性情報をひも付けて活用するCIM(Construction Information Modeling)を一貫して導入しました。サイバー空間内に現実空間の環境を再現するデジタルツインを活用し、工程、安全、品質に関する情報を一元的に管理することで、約46万m³のダム堤体を19カ月で完成させました。設計・施工段階で蓄積したCIMデータは完成後の維持管理へと継承し、施設管理に活用されています。

今回の受賞では、設計から施工、維持管理までCIMを一貫して活用し、ダム建設におけるDXの新たな在り方を示した点に加え、その取り組みを国内外へ積極的に発表、発信している点などが評価されました。

■地下街直下を縦断する大深度・超急曲線シールドの施工と自動化技術の適用

中部9号幹線は、福岡市天神周辺地区の浸水被害を軽減するために整備された雨水排水施設です。

シールドトンネルの建設では、地下街直下をシールド機で掘進する必要がありました。最小曲線半径15mの急曲線(5カ所)、地下街直下2.9mでの近接施工、内径10mの狭あい、かつ深さ30mの大深度におけるシールド発進立坑での揚重作業に加え、土被り27mのシールド管路への流入管(5カ所)を接続するなど、複数の難条件が重なっていました。

中部9号幹線の超急曲線

こうした条件に対応するため、シールド三次元線形管理システムAI自動方向制御システムを連携させたシールド自動運転技術「OGENTS/DRIVE(オージェンツ/ドライブ)」により掘進方向を高精度に制御したほか、セグメントの荷下ろし自動化技術をはじめ、さまざまな大林組の技術を駆使することで実現しました。

今回の受賞では、地下街直下という高リスクな施工環境において、都市機能への影響を最小限に抑えつつ雨水排水能力を高めて都市防災に寄与した点や、自動化技術の積極的な適用により熟練技能者不足への対応を図り、他都市の地下インフラ更新や鉄道・道路直下の近接施工への展開可能性を示した点などが評価されました。

■TBM(トンネル・ボーリング・マシン)工法の安全・高速施工技術による国内最長級6kmトンネルへの挑戦(豊川用水二期大野導水併設水路)

豊川用水は、愛知県東部などを中心に、水道用水、農業・工業用水を供給する重要なライフラインです。通水開始から30年以上経過したことから、同用水に併設する水路を新設し、複線化するものです。

今回の工事では、細かい岩石が帯状に分布する断層破砕帯や軟弱地山といった地質条件が大きく変化する中で、円形に岩盤を削るTBMを用いて約6kmの長距離を一方向から施工する国内でも類例の少ないトンネルを構築しました。

TBMには、高耐久型カッターの装備や自動連続ずり搬出システムを採用し、掘進効率を最大2.9倍まで高めることで高速施工を実現しました。安全面では、小断面用に改良した水圧ハンマーナビ®や日本初の肌落ち(切羽面での岩石落下)予測システムなどを活用し、切羽における岩石落下リスクを低減しました。その結果、全線において肌落ち災害ゼロを達成しました。

軟弱地盤を含む岩盤内に内径3.4km、延長6kmの水路用トンネルを構築

今回の受賞では、長距離TBMによる施工において革新的な掘進技術と最新のDX技術を統合して安全性と高速施工を両立した点や、地質変化への対応、掘削土砂の搬出効率、切羽の安全確保といった課題に対する知見を示し、多様なトンネル工事への展開が期待される点が評価されました。

環境賞

■建設業界の脱炭素化を加速する裏込め注入材~バイオマス発電の副産物を有効活用~

シールドトンネル工事では、大断面化や長距離化が進むにつれ、施工に伴う CO₂排出量が増加しています。特に、裏込め注入材をはじめとするセメント系材料の使用量が増加し、CO₂排出量の抑制が重要な課題となっていました。

この課題に対し大林組は、バイオマス発電の副産物である木材炭を活用した「CN(カーボンニュートラル)裏込め注入材」を開発しました。木材炭は、木材などのバイオマスを炭化させ、炭素を固定・貯留できるバイオ炭の一種です。CN 裏込め注入材は、裏込め注入材として世界で初めてカーボンニュートラルを達成した材料であり、従来品と同等の施工性・品質を確保しています。

シールドトンネルのセグメント施工時におけるCN裏込め注入材の注入状況と注入材の供試体

今回の受賞では、科学的根拠に基づいてCO2排出量削減効果を示した点、施工性と品質を確保したうえで実工事に適用した点、さらに今後の普及によりシールドトンネル工事をはじめとする建設業界の脱炭素化に大きく貢献できる点が評価されました。

技術開発賞

■クレーン作業の生産性と安全性向上を支援する次世代運転システム(ORCISM®:Obayashi Robotics Crane Integrated SysteM)

建設業界では、担い手不足や技能者の高齢化が進み、建設現場における安全性の確保と生産性向上の両立が重要な課題となっています。特にクレーン作業は操作ミスが重大災害につながる恐れがあるため、作業を支援する新たな技術が求められていました。

そこで大林組は、クレーン作業の安全性向上や省人化、技能補完、生産性向上を支援する次世代クレーン運転システム「ORCISM®(オーシズム)」を開発しました。

デジタルツインを用いた施工シミュレーション

ORCISMは、「危険作業を未然に防止するクレーン」の実現を目指した、クレーン作業の安全支援機能、遠隔・自動運転機能、施工計画や運転シミュレーション機能などを、デジタルツイン上で統合的に管理制御するシステムです。

今回の受賞では、クレーン作業における安全性の確保と生産性向上を同時に支援する技術であることに加え、省人化、技能補完や技術・技能の継承にも貢献する点が評価されました。

■山岳トンネル覆工作業の自動化セントルの開発

山岳トンネルの覆工作業では、セントルと呼ばれる移動式型枠を所定の位置に据え付ける作業と、コンクリートを打設する作業を繰り返し行います。これらの作業は狭い空間で行われるため、作業員の負担が大きく、省人化や安全性向上が求められていました。

大林組は、山岳トンネルの覆工作業において、セントルセットからコンクリートの打設・締固めまでを自動化しました。これにより、狭い空間での人力作業を大幅に減らし、安全性向上と品質確保を実現しています。

今回の受賞では、覆工作業全体を対象に自動化し、省人化や生産性向上を実現した点や、作業員の負担軽減、品質確保、安全性向上、作業環境の改善に貢献し、今後の山岳トンネル施工における覆工作業の高度化につながる技術として評価されました。

磐越自動車道・宝珠山トンネルでの施工状況

国際活動奨励賞

星野 智紀(大林組 桃園MRT工事事務所 副所長)

  • ※役職、所属は応募時のものです

大林組は今後も、安心して快適に暮らせる社会のインフラ整備に寄与するとともに、脱炭素社会の実現に向けた新たな技術開発に努めてまいります。