都市環境、地域、人をつなぐ都市型物流施設

#23 三井不動産ロジスティクスパーク座間

物流施設は、郊外から都市へと転換しています。近年、物流業界は「2024年問題(※1)」と呼ばれる労働時間規制による輸送効率の低下に加え、EC(電子商取引)需要の急増や配送サービスの多様化といった大きな変化に直面しています。その結果、物流施設は郊外から都市部への移行が求められるようになりました。

こうした課題に応えるため、2023年に神奈川県座間市に誕生した「三井不動産ロジスティクスパーク座間」は、最寄り駅から徒歩圏内、国道に隣接する立地を生かした、都市型を象徴するプロジェクトです。

地上4階建て、延べ面積約13.4万m2(およそ東京ドーム3つ分)のこの施設は、従来の「モノのための巨大なハコ」という倉庫形式から脱却し、都市環境、地域、人をつなぐ新しい物流施設のあり方を追求しています。

外装の太陽光発電や、地域とつながる公共緑道、働く人のための充実した共用スペースなど、多様な価値を融合させた物流拠点です。

  • ※1 物流業界の2024年問題
    2024 年4 月1 日から働き方改革関連法がトラックドライバーに適用され、時間外労働の上限が年960 時間(月80 時間)となったことから生じるさまざまな問題
国道246号線沿い、駅も近く、住宅地に隣接して誕生した都市型の物流拠点(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
座間市特有の地形「河岸段丘(※2)」の段状と地層をモチーフに、アースカラーを基調とした北東側外観(撮影:Nacása & Partners Inc.)
  • ※2 河岸段丘
    川の流れに沿ってつくられた階段状の地形
  • 川が大地を侵食する
  • 浸食された大地が隆起する
  • 大地の隆起と堆積を繰り返して階段状となる

都市環境、地域、人をつなぐ

1階平面図。多様なニーズに対応できる倉庫空間が広がる

三井不動産ロジスティクスパーク座間は、複数企業がフロア単位や区画単位で利用できるマルチテナント型物流施設です。一棟を丸ごと一企業が使用するBTS(Build To Suit)型とは異なり、必要な面積だけ借りられる柔軟さが特徴で、さまざまな業種や規模の事業者に対応できます。

この施設のコンセプトは 「EcoLogistics(エコロジスティクス)」。
「Ecology(エコロジー:環境)」と「Logistics(ロジスティクス:物流)」を掛け合わせた造語です。

コンセプト実現に向けて、都市環境や景観のための「エコファサード」や、地域のための「公共緑道」「防災公園」を設置し、河岸段丘をデザインモチーフとした内外装デザインを展開。山岳地帯の「エコリゾート」をインテリアテーマとして内部空間を構成し、充実した共用空間を設えることで、モノではなく人を主役とした新しい物流施設を目指しました。

  •  エコファサード 
  •   公共緑道  
  •   防災公園  
  •  エコリゾート 

これらのコンセプトを軸につくり上げたデザインを、ひもといてご紹介します。

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都市に溶け込む、発電する外装 ―エコファサード

ソーラーパネルの発電効率が高く、国道沿いで十分な日照時間を確保できる南側に計画したエコファサード(撮影:Nacása & Partners Inc.)
 エコファサード 

都市部では特に、巨大で稼働率の高い物流施設が自然や都市環境に与える影響を無視できません。そこで、国道に約300m面する大きな南側外観を生かし、ソーラーパネルを組み込んだ「エコファサード」を計画しました。

一般的に、高さ1m程度の無機質なコンクリートなどの腰壁で構成される車路壁面を、ソーラールーバーと有孔折板で構成することで、発電機能と抜け感のある軽やかなデザインを両立させています。

ソーラールーバーと有孔折板によるエコファサード。アルミ型材にソーラーパネルを内蔵したソーラールーバーは、空の青さを反射し表情を変化させる(撮影:川澄・小林研二写真事務所)

24時間365日稼働する物流施設では、夜間の景観にも細やかな配慮が求められます。

従来の白くまぶしい天吊り照明は、都市部では光害の一因となります。そこで、オレンジ色のLEDを採用し、天井面に柔らかく反射させる間接照明に変更。まぶしさを抑えながら、ノスタルジックで温かみを感じる夜の佇まいを演出しています。

エコファサード立面図
車路断面図
LED間接照明によりまぶしさを抑えた、ドライバーに優しい車路(撮影:Nacása & Partners Inc.)
トンネルのようなオレンジの柔らかな明かりがこぼれる、ノスタルジックな夜間照明(撮影:Nacása & Partners Inc.)

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地域と共に歩む、安心の拠点 ―公共緑道・防災公園

敷地東側公共緑道沿いのバス停に隣接する防災公園は、バスの待合いとしても利用可能な地域の防災拠点となる(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
  公共緑道  
  防災公園  

都市の限られた敷地で最大限の床面積、高い事業性を確保しながら、物流施設が地域とどう共生できるか。それが大きな課題でした。

そこで、当初歩道のなかった敷地の東西境界に、幅4~6mの公共緑道を座間市と共同で整備しました。そこに設けたかまどベンチや緑地は、近隣住民の安全と景観に寄与しています。

さらに、東側のバス停に隣接して防災公園を計画。エコファサードで発電されたエネルギーは、災害時には防災公園へ供給されます。

従業員と地域住民の憩いの場であると同時に、有事には防災拠点として機能する――防災をきっかけに地域とつながる物流施設を実現しました。

当初歩道のなかった東側敷地境界
防災公園に隣接する公共緑道とかまどベンチ。かまどベンチは災害時に座板を外すことで炊き出し用かまどとして使用できる(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
「つなぐ防災」がコンセプトの防災公園には太陽光で維持可能な設備を完備し、座間市と防災協定を締結した(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
日常的には従業員の休憩スペースとして使用される
時には座間市が開催する防災イベントの会場として使用される

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ここで働く人たちのために ―エコリゾート

前面を緑地に開くことで、従業員は街の流れを感じながら働く。
物流施設内の活動の様子が外からも垣間見えるつくり
 エコリゾート 

物流業界では、「2024年問題」を背景に、働き手の確保が重要な課題となっています。女性を含む多様な人材が活躍する今、職場環境の魅力や清潔感は欠かせません。また、マルチテナント型の柔軟性を生かし、テナントに選ばれる施設づくりも求められます。

そこで大林組は、従業員が心地よく働ける環境と、人に寄り添うデザインを追求しました。自然を感じる「エコリゾート」をコンセプトに、座間市特有の河岸段丘をモチーフにした段状デザインと温かみのあるアースカラーの外装を採用。さらに、上質なラウンジや開放的な屋外テラスなど、充実した共用空間を設けることで、従来の物流施設とは一線を画すホスピタリティの高い空間を実現しました。

また、エコファサードでの創エネルギーをはじめ、超高効率空調や照明計画によってオフィスエリアで1次エネルギー消費量を107%削減し、ZEB(ゼブ)の認証を取得しています。

(撮影:Nacása & Partners Inc.)
従業員の休憩に利用する、ホテルライクな2階ラウンジ(撮影:Nacása & Partners Inc.)
ラウンジでは、斜め天井と凹凸天井が特徴的な、上質さを感じる空間が広がる(撮影:Nacása & Partners Inc.)
ラウンジに併設するホビールームでは、休憩時間にパッドゴルフでリラックスする場面も(撮影:Nacása & Partners Inc.)
全席電源とWi-Fiを完備したワークプレイスを主体にした、3階ワーケーションテラス(撮影:Nacása & Partners Inc.)
一人でも複数人でも利用しやすいように多様な家具を設えた(撮影:Nacása & Partners Inc.)
  • 「水」をフロアテーマにした1階エレベーターホール(撮影:Nacása & Partners Inc.)
  • 「石」をフロアテーマにした2階エレベーターホール(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
  • 「土」をフロアテーマにした3階エレベーターホール(撮影:Nacása & Partners Inc.)
  • 「木」をフロアテーマにした4階エレベーターホール(撮影:Nacása & Partners Inc.)
河岸段丘から想起される、水、石、土、木をフロアテーマとして、シックなエレベーターホールと廊下を展開
窓が大きく開放的なパウダーコーナー(撮影:Nacása & Partners Inc.)
ドライバーのための休憩ラウンジも完備(撮影:川澄・小林研二写真事務所)

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荷物の積み下ろしを行うための「トラックバース」(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
3階ランプウェイ(傾斜路)(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
メインエントランス(撮影:Nacása & Partners Inc.)
(撮影:Nacása & Partners Inc.)

物流施設は、単なるモノの拠点から街と人をつなぐ存在へ――三井不動産ロジスティクスパーク座間は、その転換点を象徴するプロジェクトです。ここから、都市とともに歩む新しい物流の物語が始まります。

ともにつなぐ。ともにうみだす。
三井不動産ロジスティクスパーク座間(提供:三井不動産、動画再生時間:6分43秒)