大地の記憶—その成り立ちと人々の営み

生者と死者のつながるトラジャ高原(インドネシア・スラウェシ島)

複数のプレートの境界に位置するインドネシアの島々は、環太平洋火山帯に属し、現在も日常的に地殻変動が発生する場所である。

トラジャ高原は、スラウェシ島南部の標高1000〜1800mに位置し、周囲を切り立った巨大な石灰岩の崖が囲む。トラジャの人々は集落の奥に位置する崖に穴を掘って舟形の柩に死者を納め、風葬する。死を「新たな旅立ち」と捉え、盛大な祝祭として葬儀を営むのである。トラジャの伝統的家屋「トンコナン」の屋根も舟形で、舟は生者と死者のつながりを象徴するものである。

トンコナン 画像提供:アフロ
トラジャでは、故人の魂の依代(よりしろ)、墓の守護者として、「タウタウ」(木彫りの像)が作られ、墓地に供えられる 画像提供:アフロ

独自の農地分配システムを持つルテン盆地(インドネシア・フローレス島)

火山島・フローレス島では、標高2000m級の山脈が東西に走り、多くの人々が起伏に富む土地に住んでいる。同島西部のルテン盆地に暮らすマンガライ族は、こうした土地でも皆が公平に農業を行える独自のシステムを考案。蜘蛛の巣状に田畑を分割し、「水が引きやすい(※2)中心近くの土地」と「斜面や外側の土地」を組み合わせることで、土地を公平に分配し、共同体の絆を維持してきた。棚田の中心はすべての生命、土地の起点とされる。

ルテン盆地の水田 画像提供:アフロ

※2 用水は、水源に近い人が独占してしまわないように、周囲の山や河川から用水路を通じてまず中心点へ引き込み、中心から外側に向かって全区画に平等に水が行き渡るように配水する。余分な水は外周部に流す。

地上絵の描かれたナスカ台地(ペルー)

アンデス山脈の隆起に伴う地殻変動の過程で、海底の堆積層が上昇して標高約400mの乾燥した台地を形成。ナスカ文明の時代(紀元前100~紀元後700年ごろ)、台地上の砂漠の地表にハチドリ、サルなどの多数の巨大な「地上絵」が描かれた。

ナスカ台地の地表は、アンデス山脈から運ばれた酸化鉄やマンガンを含んだ赤茶色の小石に覆われており、天然の舗装(ペーブメント)となっている。地上絵の線は、その下の白い地層(海底由来の石灰分や珪酸塩)を露出させることで描き出された。さらにナスカ台地が世界有数の乾燥地帯で侵食を受けにくいことなどから、約2000年を経ても消えずにその姿を現代に伝えている。

地上絵の意味などは未解明であるが、ドイツの考古学者マリア・ライヘは地上絵の線について、夏至と冬至に太陽が日没する方向に一致するものがいくつも存在することを明らかにし、天体観測や暦との関連を説いた。目的については雨乞いなどの宗教的儀礼、社会的な情報伝達(家畜や交易路など)が有力視されている。

地上絵(ハチドリ) 画像提供:アフロ

太陽をつなぎとめる場所・ピサック渓谷(ペルー)

アンデス山脈の隆起および氷河と河川の侵食により形成。15世紀ごろ、インカ帝国はこの地形と肥沃な土地を活かし、大規模な段々畑(アンデネス)を建設した。ピサック遺跡には「インティワタナ」(太陽をつなぎとめる場所)と呼ばれる石柱があり、この石柱が落とす影を観察することで、夏至や冬至などの重要な節目を把握し、農耕サイクルを管理したり、宗教儀式を執り行ったりした。

アンデネスとピサックの遺跡 画像提供:アフロ
インティワタナ 画像提供:アフロ

塩の大地が広がるウユニ塩湖(ボリビア)

太古の海水がアンデス山脈の隆起で山脈の間に閉じ込められ、流れ出る川がない盆地で長年蒸発し、塩分だけが蓄積されて、南北100km、東西250km(新潟県とほぼ同じ大きさ)の塩湖が形成された。塩湖全体の高低差がわずか50cm以内という「世界で最も平らな場所」である。ペルーからボリビア、チリ、アルゼンチンにかけて広がるプーナ高原(アンデス山脈の高地砂漠地帯)には、ほかにも多数の塩田や塩湖が分布し、塩湖で採れる塩は湖塩と呼ばれ、主として家畜用に利用されている。

ウユニ塩湖 画像提供:アフロ
乾燥のために積み上げられた塩 画像提供:アフロ

この記事が掲載されている冊子

No.65「大地」

生命を育み、地球の豊かな自然環境を支える大地。私たちは日々、その恵みを受けて暮らしています。大地はどのように生まれたのでしょうか。また、地球以外の惑星に、大地は存在するのでしょうか。
本号では、人々の暮らしに根づいた世界各地の色彩豊かな大地の表情を紹介し、その成り立ちについてもひもときます。また、大林プロジェクトでは、火星のクレーターに大地をつくり、生命を育む環境を創出するという宇宙規模の誌上構想に挑戦しました。大地が育む自然の豊かさ、尊さを見つめ直し、未来の地球環境を考えます。
(2026年発行)

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