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創エネルギー

グリーン水素ってなに?大林組がニュージーランドで水素をつくる理由とは?

大林グループでは、「省エネルギー」「創エネルギー」「CO2(二酸化炭素)抑制・吸収」「木造・木質化」「長寿命化/資源循環」といった5つの取り組みで、積極的にカーボンニュートラル社会実現への取り組みを推進しています。

その中でも、エネルギーを新たにつくり出す「創エネルギー」は、ゼネコンである大林組の取り組みとして、意外に感じられる方もいるかもしれません。

実は、大林組は「太陽光」「風力」「バイオマス」「水力」「地熱」といった再生可能エネルギー事業に積極的に取り組んでおり、現在(2026年1月)、国内外43カ所、発電容量で約320MWの発電所を商業運転しています。

さらに大林組は、水素エネルギーの活用にも取り組んでおり、特にニュージーランドでは「グリーン水素」の製造拠点をつくり、海外に輸出するプロジェクトを進めています。

この記事では「グリーン水素」について、そして、大林組がニュージーランドでその製造に取り組む理由についてご紹介します。

水素は、CO2を排出しないエネルギーとして注目される

水素とは、文字通り「水の素」です。水素(H2)自体は気体ですが、地球上には気体としてではなく、ほとんどが酸素と結びついた「水(H2O)」として存在しています。

水素は地球上で一番軽い物質なので、空気中に放出するとすぐに上へと広がっていきます。その性質を生かし、20世紀初頭から気球や飛行船の浮揚用のガスとして使用されていました。

近年、この水素がクリーンなエネルギーとして注目されています。

水素(H2)と酸素(O2)を反応させると「水(H2O)」と「電気」が発生します。

水素(H2)と酸素(O2)を反応させると「水(H2O)」と「電気」が発生します。

この化学反応を利用したのが燃料電池(FC:Fuel Cell)です。モビリティ分野では、燃料電池を搭載したトラックやバスなどはFC自動車と呼ばれ、商用利用が拡大しています。建設機械における活用も期待されており、大林組でも水素燃料電池を搭載した油圧ショベルカーの実証実験に取り組んでいます。

日本初、建設現場において水素燃料電池搭載油圧ショベルの実証実験を実施|ニュース|大林組

また、水素は、燃焼時において天然ガスや石油・石炭のようにCO2などの温室効果ガス(GHG:Green House Gas)をほとんど排出しません。この特性から、前述のFC自動車とは別に、水素そのものを燃料とする自動車の研究開発も行われています。さらに船舶・航空機燃料としての利用や、水素燃焼でタービンを動かす水素火力発電にも期待が寄せられており、幅広い領域で実用化に向けた取り組みが加速しています。

CO2を排出しないエネルギーとして、さまざまな分野での活用が期待されている水素。その活用の幅が広がることで、カーボンニュートラル社会の実現へ近づいていくと考えられています。

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「グリーン水素」とは

水素の製造方法は、大きく化石燃料由来と電解由来の2つに分類されます。

現在、広く普及しているのは天然ガスや石炭などの化石燃料を原料とする製造方法です。一方、水を電気分解して水素と酸素を取り出す電解法は、クリーンな水素製造方法として注目されています。

水素は、製造時に使用するエネルギー源やCO2の扱いに応じて、「グリーン水素」「ブルー水素」「グレー水素」に分類されます。

グリーン水素

グリーン水素とは、再生可能エネルギーから得られる電気を利用して水を分解し、製造する水素です。再生可能エネルギーを利用するため、製造過程でCO2を排出しないことから最もクリーンな水素といえます。

ブルー水素

ブルー水素とは、天然ガスや石炭などの化石燃料を用いて水素を製造する際に、その過程で発生するCO2を貯蔵したり、再利用したりする技術を組み合わせ、排出量を削減する水素です。

グレー水素

グレー水素とは、ブルー水素と同じ製造方法ですが、製造過程で排出されたCO2を回収せず、そのまま排出されるという点がブルー水素と異なります。比較的コスト面で優位性があることから現在使用されている水素のほとんどがこの方法で製造されています。

大林組では、再生可能エネルギーを利用してグリーン水素を製造するとともに、その利活用やサプライチェーンの構築に向けたさまざまな実証事業を世界規模で展開しています。

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大林組は、ニュージーランドでグリーン水素事業を推進

2011年の東日本大震災をきっかけに、大規模・中央集約型のエネルギー供給構造が抱える課題があらためて認識され、日本ではエネルギーの安定供給や地域分散の観点から、再生可能エネルギーの導入が一層重視されるようになりました。

こうした社会的要請を背景に、大林組は再生可能エネルギーの活用を戦略分野として位置づけ、その一つである地熱発電に着目しました。

地熱発電は、天候に左右されず24時間安定した電力供給が可能で、CO2排出量も少ないことから重要性が再評価されています。

大林組は、地下構造物の建設で培ってきた高度な土木技術を生かし、地熱発電分野への参入を模索。その中で、地熱資源が豊富で技術の進んだニュージーランドに注目しました。

ニュージーランドとの関係を築くきっかけの一つとなったのは、大林組がニュージーランドで工事に携った高速道路プロジェクト「ウォータービューコネクショントンネル」(2018年竣工)です。

ウォータービューコネクショントンネルおよびグレートノースロードインターチェンジ | 実績|大林組

このトンネルプロジェクトは、オークランド市内の交通渋滞緩和を目的とした大規模インフラ事業であり、大林組はその建設に携わることで、ニュージーランド政府や地元企業と良好な関係を構築し、同国における高いプレゼンスを確立しました。

その後大林組は、ニュージーランド先住民の土地信託組織・Tuaropaki Trust(トゥアロパキ トラスト)と共同で、ニュージーランド最大の商都オークランドと首都ウェリントンの中間に位置するタウポに、地熱発電を活用した水素製造プラント(合弁会社ハルシオンパワーが運営)を建設。2021年にグリーン水素の製造を開始しました。

大林組がニュージーランド先住民の土地信託組織・Tuaropaki Trust(トゥアロパキ トラスト)と共同で、ニュージーランド最大の商都オークランドと首都ウェリントンの中間に位置するタウポに建設した地熱発電を活用した水素製造プラント

大林組がニュージーランドでグリーン水素事業を展開する背景には、ニュージーランドの地熱資源の豊富さと、持続可能なエネルギー社会構築への強い志があります。

ニュージーランドは、地熱発電容量が1GWを超え、約100万世帯の電力を賄える規模を持つ世界有数の地熱発電大国です。

さらに、ニュージーランドは世界有数の再生可能エネルギー利用率を誇り、電力の約70%を水力、約15%を地熱で賄っています。一般家庭に供給される電力の8割以上がグリーン電力(再生可能エネルギー由来の電力)であり、電線から供給される電力そのものが低炭素であるという、非常に稀有な環境といえます。

電力源がほぼグリーンであるため、製造される水素も「グリーン水素」としての価値を持ちます。

現在、ニュージーランドでは水素燃料電池車(トヨタ「MIRAI」など)や水素バス、水素発電機の導入が進み、グリーン水素の利活用が社会全体に広がりつつあります。

ニュージーランド国内で初のメガワット級水素製造プラントによる水素の試験販売を開始 | ニュース | 大林組

トヨタニュージーランドの協力の下、水素充てんのテストを実施

地元企業による水素トラックの開発や、水素とディーゼルの混焼エンジンの実証など、技術革新も活発に行われている「グリーン水素先進国」といえるでしょう。

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「次世代に資源を受け継ぐ」先住民マオリの思想と日本の技術力が融合

グリーン水素製造事業における大林組のパートナー「Tuaropaki Trust」は、ニュージーランドの先住民マオリの地権者をオーナーとする土地信託組織です。

Tuaropaki Trustは、113MW規模の地熱発電所を25年以上安定運用しており、地域に根ざした持続可能なエネルギー活用を実現しています。

大林組は、現地の地熱掘削企業と技術提携を進める中でTuaropaki Trustと出会いました。それをきっかけとして、地熱発電による安定したグリーン電力を活用し、水素を製造するという構想が生まれました。

2024年、ニュージーランド初となるグリーン水素高速充てん施設での営業を開始

Tuaropaki Trustは、地熱発電所を中心に、地域資源を循環させる持続可能な社会モデルを近隣の事業者と共に構築しています。 例えば、地熱の熱を活用して温室でトマトやパプリカを栽培し、酪農では牛乳を乾燥させて粉ミルクとして輸出。さらに、農業や酪農で発生する廃棄物を利用してミミズを養殖し、そのミミズを土壌改良に活用するなど、資源の循環利用が徹底されています。

このような取り組みは、経済活動と環境保全を両立させるだけでなく、次世代に資源を受け継ぐというマオリの思想を体現しているといえます。

「Look after the land, and the land will look after you.(土地を大切にすれば、土地があなたを守ってくれる)」

これはマオリの格言です。マオリの人々は、自然との共生を大切にしており、先祖代々受け継いできた土地や資源を守りながら、持続可能な形で生かし、次の世代へ受け継いでいこうとする精神を持っています。こうした価値観は、Tuaropaki Trustの活動理念にも色濃く反映されています。

大林組との協業により、地熱電力を水素として蓄える技術が導入され、エネルギーのさらなる有効活用が期待されます。地熱発電の余剰電力を無駄なく活用する方法としてもグリーン水素の製造事業は、地域の循環型社会を支える新たな構成要素として可能性を広げています。

このプロジェクトは、単なる技術導入ではなく、文化・理念の掛け合わせによって生まれた新しい価値創造の取り組みです。マオリの文化的価値と日本の技術力が融合した、国際的にもユニークな取り組みとして注目されています。

こうした活動が評価され、大林組はニュージーランドの水素推進組織「ニュージーランド・ハイドロジェン・カウンシル」から水素活用を先導するとして2つの賞を受賞しました。

大林組の役職員2名がニュージーランドの「Aotearoa Hydrogen Awards 2025」を受賞 | ニュース | 大林組

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世界に水素を「とどける」イノベーション

さらに、大林組はニュージーランドで製造した水素をフィジーに輸出する実証プロジェクトを実施しました。

ニュージーランド・タウポの水素製造プラントから出荷されるグリーン水素の写真
ニュージーランド・タウポの水素製造プラントから出荷されるグリーン水素

フィジーでの実証に続き、大林組は日本、シンガポールなどへのグリーン水素輸出に向けた取り組みを進めています。これにより、ニュージーランド発のグリーン水素が、アジア太平洋地域の脱炭素化に貢献する可能性が広がっています。

大林組が進めているニュージーランドで製造した水素を、フィジーやシンガポールなど海外へ輸出する実証プロジェクトイメージ図

ニュージーランドのグリーンエネルギー利活用は、単なる国内政策にとどまらず、国際的なサステナビリティ戦略の一翼を担うものとして、今後ますます注目されていくでしょう。